最近、ネイルエキスポになると現れる、スキンヘッドにサングラス、ハリウッドスター刑事コジャックを思わせる迫力満点の大男、「あの人は誰??」と、思った人が多いでしょう。彼の名前は「トニー・クチオ」。ネイルメーカー「STAR」社のCEO(経営最高責任者)です。
トニーがネイルと出会ったのは、愛妻ロビーと共にアメリカ東海岸から、温暖の西海岸ロスアンジェルスに越してきた20年前のことです。当時のネイルは、ハリウッド女優やビバリーヒルズのお金持ちのための小さなビジネスで、上流社会のステータスでしかありませんでした。
トニーは女性の意識変革や時代の流れを敏感に汲み取り、「これからのネイル産業は躍進的な成長を遂げる」と信じ、業界全体を大きくするために情熱を持って大胆な提案を幾つも発信していきました。それを幾つかご紹介しよう。発想の原点は「常に現場で働くネイリスト達と対話を欠かさなかった」ことだと本人は回想しています。
「ネイル材料が非常に高くそれが技術料金にも反映して、一般女性には敷居が高い」という情報に対して、すべての女性がネイルの手入れをおしゃれの常識とさせるには料金が安くなること。そのために、沢山のネイル商材を使用するネイリスト達に、まとめ買いの利点を設ける価格システムを創りました。
「アクリリックの悪臭が原因で、自分がブースを出している美容室から追い出されてしまいそうだ」となげくネイリストの声を生かして、、悪臭が少なく、扱いも簡単で、短時間にきれいなつけ爪が完成する「ジェル」を創りました。これはネイリストにとって大きな利点となり、短期的でアメリカのつけ爪のスタンダードとなりました
「今まで週に1回ネイルサロンに行って爪の手入れを行っていた人たちが、ONE DAY SPA(ワンディ・スパ)に流れるようになった」お客様の離れだした自分のサロンがどうしたらSPAに打ち勝っていけるか、に対して、自然な素材を使ったハンドとフットのスキンケアローションを創り、ネイルスパをアピールしました。ナチュラルな温かみをもち総合的な若返りと美しさを手に入れることが出来る商品として、他のメーカーも追随しています、日本でも新たなメニューに成長するでしょう。彼のビジネスマインドは、どんなに良い商品でも商売で利益を得るために邪魔になる高額であれば、その商品はネイリストのためにはならないという考え方です。ネイリストが必要とする商品をより買いやすい価格で売れるように努力を惜しまないのです。そして、一番心がけていることは、それがネイリストにとって「Affordable=買える・買いやすい価格であること」です。
STARネイルは、トニー夫妻と弟さんの3人の頭文字を取ってつけられました。彼の祖父母は、イタリアのシシリー島からの移民としてニューヨークにやってきたのです。働くところがなく大変苦労を強いられた、ということを両親から伝えられて育ったせいでしょうか、ネイリストたちが、キャリアとして確立し、高収入を得て幸せに生活を送れるようになることを願い、彼はビジネスへの情熱を燃やし続けているのです。
そんな彼もプライベートは2人のお嬢さんの優しいパパ。そして週末は彼の唯一の趣味であるHorse Track(競馬)に嬉々として出掛けます。そこでは、社会的地位や人種を超えて本当に気の合う仲間とくだらない話で若いときのようにワイワイ楽しんでいます。それが彼のHollywood Park(ロス近郊の競馬場の名前)憩いの場なのです。
「日本の女性はとてもおしゃれ上手で高い美意識を持っているのに、どうして爪をもっとケアしないのか?」彼が日本にはじめて来日した時の言葉です。ネイル商材の高額さ、そしてそれに伴うネイル技術料金の高さにビックリしていました。
日本でネイルをもっと普及させるにはネイル商材をもっとAffordable(買いやすい価格)にすること、ネイリストはお客様が本当に欲しているサービスは何なのかしっかりと研究すること。そしてネイルディラーは、ネイリストがどんな商材とサービスを欲しているのかの対話を続けることです。
常に業界の変化とトレンドを読み、顧客のニーズを読みながらリードし、新技術を提案していくことがさらに大きな利益を生み出すと力説します。
ところで気になるお話ですが「ハリウッド女優達もそれまで必須といわれていたつけ爪をやめて、自爪をナチュラルな長さに整え、ネイルカラーを施しパーティなどに訪れるようになりました」とLA在住のネイリストから最近聞きました。
前出のワンディ・スパとは「スーパー銭湯?」の延長上にあり、アメリカの女性達は休日をそこで過ごし、リラックスしながら頭の先から足の先まで美しく生まれ変わることに夢中になっています。癒しやヒーリングをコンセプトにマッサージからヘア、フェイシャル、ハンド、フット全ての自然派のサービスが受けられる所です。
日本でも美容業界全体にナチュラル嗜好が吹き荒れる予感。ナチュラルネイルの流行、つけ爪ばなれの兆候に、貴方のサロンのお客様をリード出来ますか?
<2002年10月記 原文>